シロウトでも大丈夫

私、プレミアリーグのクラブに就職しちゃいました

2014/10/7
イングランドのプレミアリーグのクラブで、スポンサーセールスに携わっている日本人女性がいる。クラブの希望でクラブ名を明かすことはできないが、日々の出来事について執筆することが許された。サッカーの本場に飛び込んだ“なでしこ”が、最先端のスポーツビジネスをレポートする。
世界一の人気を誇るプレミアリーグ。ゴールが決まるとスタジアムは熱狂に包まれる(写真 : アフロ)

世界一の人気を誇るプレミアリーグ。ゴールが決まるとスタジアムは熱狂に包まれる(写真 : アフロ)

フツーな海外生活。
海外生活も気づけば7年目――。

観光が短期留学になり、それが長期留学になり、まさかの大学院生になり、挙句の果てにサッカークラブで働くことになり、気づけば7年。しかも働いたプレミアリーグのクラブは、現在の勤務先を含めて計2つ(つまり”移籍”を1度経験しました)。正直自分でもなぜこんなことになったのか、全くわからないのです。サッカーが好きでイギリスに興味を持ったのは事実であるけれども、それが仕事になるなんて1ミクロンも考えていませんでした。

思えば私自身、何も特別なことなんてしていません。エリート街道を歩んできたわけでもないし、これといって特技もなし。帰国子女でもなければ、優等生でもない。高校時代の英語の成績は5段階評価の3でしたから。そんな私が、イギリスのサッカークラブに雇われて、サッカービジネスを「女性の視点」で書くことになってしまったんだから、こうなってくるともうさっぱりワケがわからない状態。

ただ、この仕事を始めてから自分のことや仕事のことを聞かれる機会が多くなりました。それと同時に、この世界の仕事や外国で働くことに興味を持っている人がたくさんいることを知りました。

ちょっとずつ仕事にも慣れてきて、日本がまだまだスポーツをビジネスとして捉えることに遅れを取っていることもわかったし、サッカーを通して日本を外から見て、自分なりに色々なことに気づきました。そして実はそれをちょっと誰かに言いたい自分もいました。インプットしたらアウトプットしないとね。

ということで、この連載を通して、サッカーやスポーツビジネスについて興味を持ってもらったり、海外で働くコツなんかを参考にしてもらえればと思います。そのかわり、結構ユルーくいきますよ。

右も左もわからない状態で異国に飛び込んだ(写真 : 本人提供)

右も左もわからない状態で異国に飛び込んだ(写真 : 本人提供)

最初はロンドンのホテルに就職

サッカークラブのオフィスで一体何をして働いているのか気になるところだと思いますが、当たり前だけどサッカーはしていません。ざっくり言うとスポンサー関係の仕事です。

具体的に何をしているかは後々説明していくことにして、色々な方にお会いしてまず一番に聞かれるのが、この世界で働くことになった経緯。答えとしては、「宝くじに当たったから」が一番しっくりくると思います。

基本的に外国で現地企業に雇ってもらうのは大変です。大学院を卒業し、国際マーケティングの学位を取ったとはいえ、この国での経験もコネも何もないただのちっこいアジア人が現地企業に相手にされるわけがないことは皆さんにも容易に想像してもらえると思います。

なので私、大学院を卒業してしばらくはホテルで働いていました。元々はホテルやエアライン、旅行会社などの観光系の仕事に就こうと思っていたんです。理由ですか? 外国人の私が日本語と英語能力を生かして外国で働くのに一番需要があると思ったから。だって、どんなに不景気になってもあの大都市ロンドンで日本人旅行客がゼロになることはないじゃないですか。求人が多いホテルのレセプションでまず働いて、内部公募でマーケティングの仕事に就くのが目的だったんです。

が、どう頑張っても成果がでない。

客に怒られびくびく、パソコン操作中に話しかけられパニック。あまりに出来が悪いからさらに怒られる。で、つまらなくなるという見事なループにどっぷり浸かる私。さすがの私も社内での肩身が狭くなり、長くお世話になっている先輩に相談に行きました。

意外にも、彼女のアドバイスはあっさりさっぱりしたものでした。

「つまんないならさぁ、やめちゃえば?」

カ、カッコイイ。

渡英10年以上、今もシティの金融街でバリバリ働く姉さんの一言は、そのとき私の脳天を直撃したのです。

「ですよねぇ、そうですよねぇ」この言葉に覚醒した私は、その足で別の友人に「私、明日仕事辞めます」と宣言をし、翌朝始業10分前に上司のもとへ直行。宣言通り、「私、今日で仕事辞めます」と告げたのです。あのときの上司の引きつった顔は忘れられません。本当にごめんなさい。

ググって見つけたドリームジョブ

そしてスッキリした気分でそのまま家に帰り、翌日から新たに仕事を探し始めました。

「このままじゃ、故郷に錦を飾れない」

そんな気持ちでパソコンをいじった結果、グーグルの検索画面の上の方に出てきたのが、「プレミアリーグ」、「ジャパニーズスピーカー」、「1ヶ月限定インターン」というキーワード。

「なんだ、これ?」

ということで早速クリックしてみると、あらヤダ、求人じゃないですか。しかもプレミアリーグでスポーツマーケティングがなんちゃらって書いてある!

よし、履歴書を送っちゃえ! すぐに私は履歴書を書き、メールの送信ボタンをクリックした。(第2回に続く)

(本連載は毎週火曜日に掲載する予定です)